鬼ザラ糖ブランディングサイト
プロ・インタビュー
2024年7月
confiture fumi (コンフィチュール)
地元素材を主役に
素材に合わせ、10種類の砂糖を使い分け
〈 confiture fumi(コンフィチュール フミ)〉
奈良県吉野にあるコンフィチュールの専門工房。オーナーの東 史(あづま ふみ)さんは、地元食材を中心に「青トマト」「ほおずき」など珍しいコンフィチュールを数多く手掛け、砂糖も数十種類ある中から素材に合うものを吟味しています。地元食材との向き合い方、鬼ザラ糖を始めとする砂糖の使い分けについてお話を伺いました。
【confiture fumi ができるまで】
まず、工房「confiture fumi」、東 史(あづま ふみ)さんのご経歴についてお伺いします。
「confiture fumi」の立ち上げは 2006 年です。それ以前は建築の仕事をしていて、立ち上げの1年前、設計に携ったお店の依頼で、即興でリンゴとラズベリーのジャムを作ったのが始まりでした。お店で出すフレンチトーストにかけるものだったので、瓶詰のように甘く煮詰めることはせず、フルーツソースのように仕上げました。これがお客様に好評で、量り売りもしていただけることになったんです。
その後、野菜ソムリエの資格を取り、地元のパン屋さんのリクエストで野菜のジャムに挑戦しました。スーパーで 20 種類くらい野菜を買ってコンフィチュールにして持っていったら、とても気に入っていただけて、販売が決まったんです。それと同時に「confiture fumi」もスタートしました。
吉野の自然に囲まれたカフェ
「ナラヤマソウ」
最初はパンやお料理に合わせるジャムやソースとして始められたんですね。「コンフィチュール」という名前を使うようになったのはいつ頃からですか?
「confiture fumi」立ち上げ当時、いわゆる「ジャム」とは違うことを伝えたくてこの名前にしました。砂糖で甘く煮込んで保存性をあげるのが日本のジャムなのですが、フランスのコンフィチュールは「砂糖で炊いたもの」という広い意味合いがあり、お料理にも使います。自分の作るものにはこちらのほうがしっくりくると思ったんです。
ルバーブやほおずきなど、珍しいコンフィチュールも多く作られていますが、食材選びはどのようにされているのですか?
スーパーで野菜を選んでいた頃は「コンフィチュールにできそうなもの」という視点で探していましたが、直接仕入れるようになってからは「生産者さんありき」でスタートすることが多くなりました。ルバーブやほおずきも、たまたま奈良に生産者さんがいらっしゃったことがきっかけです。「奈良県産のものをがんばって作っておられる方がいたら、それをコンフィチュールにしたい」という思いで取り組んでいます。
【confiture fumi のコンフィチュール作り】
鬼ザラ糖を使っていただいている「青トマト」「赤トマト」も地元の農家さんから?
はい。「青トマトのコンフィチュール」は、農家さんがトマトを大きくするために間引いたものを、その日中に仕入れて炊いたものなんです。
「青トマト」って、品種ではなく色づく前の摘果トマトのことなんですね。
※青いトマトの品種もありますが、本稿では便宜上、摘果トマトのことを「青トマト」と表記しております。
トマトは摘果による廃棄が多い野菜で、大きな農園ではかなりの廃棄が出てしまうんです。農家さんから相談を受けて、どのタイミングのどの青トマトがいいか、何年もかけて試作しながら見極めて、商品にしていきました。
採れたての青トマト(摘果トマト)
(confiture fumi 公式instaglamより)
青トマトのコンフィチュール
(confiture fumi 公式creemより)
青トマトのコンフィチュール
(confiture fumi 公式creemより)
特にレストランさんからの評判が良いですね。収穫後 24 時間以内に炊き上げないと綺麗な色が出ないので、農家さんと直結していないと作れないし、加工して卸せる人がとても少ないので、需要も高いです。
青トマトは市場に出ないので、農家さんと直接繋がりがあったからこそ実現したコンフィチュールですね。
はい。ご自身で加工されている農家さんもおられないと思うし、生のまま並べてもなかなか売れないだろうし、ほとんどが廃棄されていると思います。
農業では、摘果とか美味しいけど形が悪いとかいうものはどうしても出てきますから、仕事をしていくうちに農家さんとの繋がりもかなり増えました。農家さんもフレッシュを出荷しているときは繁忙期なので、加工品は私が担当することで、少しでも力になれたら良いなと思っています。
青トマトのように前例がないものは、どのように完成まで導かれたのでしょうか。
すごく遠回りですが、0 からやるのが好きなので、全部の作り方を試して、全部自分で味見する、というやり方をしていました。
湯むきするかしないか、種を取るか取らないか、カットは櫛形なのか角切りなのかミキサーなのか、お砂糖は上白かグラか鬼ザラか……。調理方法や材料を変えながら何通りも試作して、3 ヶ月後の賞味期限に自分の舌で確かめて、また一から試作する。その繰り返しで、商品になるまで大体 1 年以上かかっていましたね。無駄な時間かもしれませんが、3 年ぐらいはそんな風に取り組んで、経験を重ねていくうちに「すももとプラムは大体一緒かな」とか、似たような傾向のものは落とし込んでいけるようになりました。
お砂糖も最初は 30 種類ぐらいありましたが、今は 10 種類くらいに絞れています。
トマトは「れいか」と「桃太郎」、2つの品種に対して 100 パターンくらい試作した結果「トマトだったら鬼ザラ糖がいい」という答えを出しました。今は品種が何であっても、トマトならまず鬼ザラ糖から試していきます。
「トマトだったら鬼ザラ糖」の決め手は何だったのでしょうか。
トマトの甘味を引き出してくれたことです。トマトは加熱すると味が濃くなるのですが、それを差し引いても、トマト特有の甘みを一番出してくれるのは鬼ザラ糖ではないかと思っています。
それと、炊き方による違いもあります。例えば、苺のコンフィチュールは生の苺に砂糖をまぶしてなじませるので顆粒の細かい砂糖を使いますが、トマトは先にトマトだけを加熱して、後から砂糖を入れるので、粒の大きい鬼ザラ糖でも問題ありません。むしろ、他の砂糖よりゆっくり溶けることが良い効果を生んでいるようにも思います。
【砂糖の使い分けについて】
最後に、コンフィチュールにおける砂糖の使い分けについてお伺いします。
南高梅のコンフィチュールで、「南高梅+上白糖」のものと「南高梅+グラニュー糖+蜂蜜」のものがありますが、この二種類はどのような違いを意識されたのでしょうか。
上白糖で炊くと梅の酸味がマイルドになるので、瓶詰用は基本「南高梅+上白糖」です。「南高梅+グラニュー糖+蜂蜜」は、養蜂をされている方から「蜂蜜のコンフィチュールを作ってほしい」と依頼を受けて作ったもので、こちらはあえてグラニュー糖で炊いて梅の酸味を残し、蜂蜜を引き立たせています。酸っぱいものにグラニュー糖を入れると「酸っぱいのに甘くなっていく」んですよ。
confiture fumi 瓶詰のコンフィチュール
甘さは上がっていくけど、酸っぱさもそのまま残る、ということですか。
そうなんです。同じ量を入れても、上白糖で炊いたものは酸味が抑えられてマイルドな仕上がりになるのに対し、グラニュー糖で炊いたものは酸っぱいのがずっと舌に残るんです。
鬼ザラ糖を使うとさらに酸っぱくなりそうですね。
「すごく酸っぱいコンフィチュールがほしい」「料理の一環として出す酸っぱいソースみたいなものがほしい」というお話があったら、あえて鬼ザラ糖で炊いて酸味を上げると思います。
酸っぱい方がいいのか、苦みを和らげたいのか、瓶詰なのか、お店で出すソースなのか、砂糖は状況に合わせて使い分けるようにしています。