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​プロ・インタビュー

装飾枠

2025年1月

シャララ舎(琥珀糖)
夢を織り成す「キラキラ」の琥珀糖

〈シャララ舎〉

三鷹市井の頭にある琥珀糖専門店「シャララ舎」。琥珀糖ブームの先駆けでありつつ、従来の「和菓子の中の琥珀糖」とは異なる独自の世界観が人気を集めています。店主の尾高さんが琥珀糖を通して追い求めるもの、シンプルゆえに難しい琥珀糖づくりの様々な工夫について伺いました。

​【琥珀糖専門店「シャララ舎」の世界】

琥珀糖(こはくとう)とは、寒天と砂糖を混ぜて煮溶かし、色や味をつけて固めたお菓子です。食感は外がシャリシャリで中がぷるぷる、透明感のある宝石のような見た目からその名が付いたといわれています。江戸時代に和菓子屋が作り始め現代に至りますが、最近では和菓子の枠を超えて愛されるお菓子になりました。

その先駆けとなったのがシャララ舎さんで、まだ琥珀糖が一般にあまり広まっていない2012年「琥珀糖専門店」としてお店を始められています。
琥珀糖を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

最初のきっかけは、子どもの頃に読んだ絵本でした。「ちっちゃくてキラキラしたもの」が大好きで、絵本に登場する「キラキラの木の実」という空想上の実をずっと食べてみたくて。大人になって琥珀糖と出会い、その夢を実現できるかもしれないと思い作り始めました。

 琥珀糖はもともとお抹茶に合わせた控えめな味のものが多いのですが、 シャララ舎ではしっかりめに味付けして、私が子どもの頃に想像していた「キラキラの木の実」の味を再現しています。

シャララ舎の琥珀糖
かわいらしいモチーフに様々な
色と風味がある
シャララ舎5.jpeg
琥珀糖の小瓶詰め
奥の5つが石の琥珀糖

次に始めたのが、鉱物や天然石等、石をモチーフにした琥珀糖です。
私が「キラキラの木の実」を食べたいように石を食べたい方が いらっしゃるので、本物の石のようなリアルな表現を目指して作っています。
「琥珀」糖と呼ぶだけあって、石と琥珀糖は相性が良いですね。
見た目だけでなく想像上の味の再現も大事にしていて、アクアマリンはソーダ、濃いブルーのラピスラズリはこっくりした味がしそうだからホワイトチョコ、あとはミントのようにスースーしそうな石、等々、同じ青系でも色からくる様々なインスピレーションを反映しています。

石の由来から着想を得ることもあります。ペリドットの琥珀糖は「オリーブ石」という別名から連想し、若桃の味にしました。

若桃: 桃の実を大きく育てるために早期に摘果した青い桃の実。見た目はオリーブや青梅に似ている。

尾高さんが想像する石の味とお客さんが想像する石の味は、結構一致するものですか?

リンクはしていると思います。ペリドットを「オリーブ石」と呼んだり、アメシストを「ブドウ石」と呼んだりするように、人間がその石の色味を見て、こんな色だよねって名前をつけることも多いので。

一つ一つ色の濃淡が違うのが、より本物らしさを感じさせますね。
粒ごとに異なる個性があると「私の石」という思いも一層湧きやすい気がします。

そうなんです。石は均一で透明なものの方が「宝石」としての価値は高いことが一般的ですが、石らしさがあるのは原石に近いラフロックやさざれ石の方だと思うんです。シャララ舎の石の琥珀糖は、そちら側に寄せて作っています。

※【ラフロック】研磨されていない自然のままの天然石。色の変化や、石以外の成分(インクルージョン)が含まれているのが特徴。 【さざれ石】自然の小石。漢字では「細石」と書く。
 

​【琥珀糖における砂糖の役割】

シャララ舎さんの琥珀糖づくりについて、
通しの手順を伺ってもよろしいでしょうか。

まず、お砂糖と寒天で寒天ゼリーの生地を作り、小分けにして色や味をつけていきます。イチゴヨーグルトのように2つの味を1つのバットで作る場合もあり、均一にするか混ぜ切らないかは、見た目や味によって変えています。「いちごミルク」のように味が混ざった方が美味しいもの、「いちごと練乳」のようにばらばらで組み合わせた方が楽しめるもの、色々なパターンがあります。

フルーツやリキュールで 味をしっかりつけるために、一度生地の濃度を上げてから色味をつけます。味付けのフルーツは冷凍ピューレを使いますが、お砂糖のおかげで保存性も問題なく、発色もよくなるので助かっています。
最後は、出来上がった生地をバットに流して固め、型で抜き、乾燥させたら完成です。

シャララ舎7.jpeg
ハート型の琥珀糖(右上)
「いちご」と「ヨーグルト」のグラデーションが見える
6_006.JPG
鬼ザラ糖SZ
ザラメ(白ザラ糖)はショ糖の単一結晶体。なかでも鬼ザラ糖は粒が大きく、平均 粒径3.7mm程。
鬼ザラ糖(左)とグラニュー糖(右)
琥珀糖作りにおける「失敗」のひとつに砂糖の結晶化(※意図しない箇所に砂糖の塊ができてしまうこと)がありますが、シャララ舎さんではどのくらいの割合で起こりますか?
他の職人さんから、グラニュー糖から鬼ザラ糖に変えたところ結晶化によるロスが減ったというお声をいただいたことがありまして。明確な理由はわからないのですが…

シャララ舎の琥珀糖は水分量が多いので、結晶化はあまり起こりません。初期の頃から鬼ザラ糖で作っているので、他の砂糖との比較も難しいですね…。

ただ、結晶化はショ糖同士が触れ合うことで起こるので、お砂糖が完全に水に溶け切っていないことが原因の可能性はあると思います。
粒の小さなグラニュー糖は溶けるのが早く、目視しづらいショ糖の結晶が溶け残ってしまうことがあります。粒の大きな鬼ザラ糖は目視しやすいぶん長く煮て、結果的に「見えないけど残っている粒」までしっかり溶け切るのではないでしょうか。そもそもの粒の数が少なく済むことも、溶け残りを防ぐ手助けになっているかもしれません。

それから、結晶化は乾いた型だとさらに起こりやすくなりますし、酸味が入ると離水もしやすくなります。そういった条件が揃うと、結晶化を避けて作る難易度は上がってくると思います。

シャララ舎さんが鬼ザラ糖を使う一番の理由は何でしょうか。

お砂糖は色々な種類がありますが、ショ糖の純度が高い方が甘みがすっと消えるような感じがします。およそ8割がお砂糖でできているにも関わらず「甘さがそんなにくどくない」と言ってもらえるのは、鬼ザラ糖のおかげもあると思っています。

それから、ザラメ自体が可愛いというのも理由の一つです。ザラメも石と同様、一種の結晶なので。 2階の「喫茶 余白」でお出ししているクラシックタイプの「アインシュペンナー※」にも鬼ザラ糖を使っているのですが、ザラメがコーヒーの中に沈んでいる姿が海の底の石のようで、とても綺麗なんですよ。

※アインシュペンナー:ウィンナーコーヒーともいう。ホットコーヒーにホイップクリームのせる。通常はシロップで 甘さを加えるが、クラシックタイプは、底に砂糖を沈め、かき混ぜずにゆっくりと飲み、時間とともにコーヒーの甘味が変化するのを楽しむ。

喫茶余白のアインシュペンナー

【「思い出の味」の再現、人工的な風味の使い方】

「キラキラの木の実」や「天然石」について、デザイン性という点では飴でも再現可能な気がするのですが、琥珀糖を選んだ決め手は何だったのでしょうか。

一つは食感です。私の想像する「キラキラの木の実」は、外がシャリッとして中がプルプルだったので、それを再現するのに琥珀糖がぴったりでした。琥珀糖の食感はお店によってかなり違うのですが、シャララ舎の琥珀糖は「キラキラの木の実」のきめ細やかなシャリシャリ感を大事にしています。

今ある中で、一番思い入れのある琥珀糖はどれですか?

やっぱりこれかな。琥珀糖を小瓶に詰めた元祖「ローズミックス」の小瓶です。白がライチ、ブルーがソーダ、ピンクがバラ、グレーみのある淡い紫はスミレ味。子どもがちょっと背伸びするような色と味の組み合わせにしてあります。

可愛さの要は小瓶に詰めてあることなのですが、注意点もあります。一点目は離水。琥珀糖は表面が乾燥しているので、密閉すると離水しやすくなります。種類によっては少量生産で賞味期限を短めに設定する等、工夫が必要です。二点目は組み合わせ。小瓶の中で香りが移るので、香味が混ざっても美味しく感じられる組み合わせにする必要があります。たとえばローズミックスの小瓶は基本がソーダで、香りの強いバラを中心にライチ、ローズ、スミレが入ります。花びらを散りばめたソーダ水のようなイメージですね。
 

20240813シャララ舎.JPG
ローズミックスの小瓶(左手前)
尾高さんが子どもの頃に好きだった「キラキラの木の実」がシャララ舎さんの原点ということでしたが、他にはどんなものから着想を得られていますか?

具体例をあげると「匂い玉」「星の砂」「缶に入ったドロップ」のような、「ちょっとチープな、ちっちゃい子がいっぱい集めて宝物にしているようなもの」ですね。シャララ舎の琥珀糖は、そういった子どもの頃のときめきを、大人が食べるもの、大人になってから買えるものにアレンジしたものなんです。
ですので、あえて昭和感のある味に仕上げているものもあります。

例えば、メロンじゃなくて「メロン味」、のような?

そうです。本物のヨーグルトではなく駄菓子屋のヨーグルトの味、コーラではなくコーラグミの味。トロピカルフルーツは、子供の頃に病院で注射をした帰りに「よく頑張ったね」って買ってもらっていた「星の飴」の味です。「本物ではないけれど、自分の中ではそれが正しい」、そんな昔好きだった「あの味」を 再現したくて試行錯誤しています。

シャララ舎10.jpeg
店内の商品棚
鬼ザラ糖は素材本来の風味を活かす商品で役立てていただくケースが多いのですが、食べるのが人間である以上、昔食べた思い出の味や石への思い入れのような、情緒的な美味しさというんでしょうか、そういったものってやっぱりありますよね。

そうなんです。人工的な味であっても、味の再現や食品の安全性等と折り合いをつけるのは簡単ではありません。「レモン味」はいろいろなメーカーのレモン香料の中から「これだ」と思う香りを選んだあと、そこに少し酸味料を加える、という作り方をしているのですが、酸味料を加えると寒天が固まりにくくなるので、今でもバランスを間違えて失敗することがあります。
そういった試行錯誤とバランスの難しさを乗り越えて「思い出のあの味」を再現できたときはすごく楽しいです。それをお店に並べて、お客さんが来て懐かしさを感じてくださると、もう本当に幸せで。

12年前、私が琥珀糖を売り出した時は、「琥珀糖」でgoogle検索しても58件ほどしかヒットしませんでした。そこから琥珀糖をもっと広めたくてお店を始めて、だんだん知られるようになってきて。これからもがんばっていきたいなと思っています。

【付記 「喫茶余白」のこと】

2階の「喫茶余白」さんは静かな空間を大事にしてらっしゃると拝見しました。理由やこだわりを伺えますでしょうか。

みんなでワイワイするお店がいっぱいあるんだから、1つくらい静かに過ごせる、いつでも静かな場所があってもいいんじゃないかなと思って始めたのがきっかけです。 
高円寺に「アール座読書館」という静かな喫茶店の先駆けのような場所があって、夫は焙煎をしつつスタッフとして働いていました。それが私と組み合わさって、「余白」のスタイルが確立されています。

はじめて伺うのですが、どんな風に過ごすのが良いのでしょうか。

喫茶スペースは全席1人1席ずつのブースになっていて、物理的にお話できないレイアウトにしてあります。少しルールは多いのですが、書いてあれば安心するルールというか、当たり前のことを文字にしてあるだけのルールなので、ご安心ください。席に冊子を置いてあるので、そちらを読んでいただければ、だいたい過ごし方がわかると思います。

メニューは、コーヒーのほかに、お茶請けの琥珀糖や琥珀糖の
ドリンクもお出ししています。琥珀糖って水に入ると透明度が
増して綺麗なんですよ。
今の季節(8月当時)は自家製の梅ソーダに「夏色金魚の小瓶」の琥珀糖が入っています。
琥珀糖ドリンク自体は、1Fの店舗で売っている琥珀糖の小瓶を買えば、お家でもできますよ。甘くない炭酸でも、甘いレモン味の炭酸でも、お好きなものに入れて楽しんでください。
 

暗くて温かい階段を上った先
に、喫茶余白の扉がある
夏限定「夏色金魚の小瓶」をソーダに浮かべたドリンク(喫茶メニュー)。夏らしさと懐かしさと子どものころの空想が詰まっている

モザイクガラスから陽光がキラキラと差し込む一人席。
日々の喧騒を離れ、本を読んだり、空想に耽ったり、自分の好きな時間をゆっくりと過ごすことができます。ルールの冊子は各席にあり、お客さんが一人で穏やかな時間を過ごすための「書いてあると安心する」ルールが綴られていました。
シャララ舎の琥珀糖と同じく、子どもの頃を思い出す「大人の秘密基
地」のような場所でした。

​シャララ舎
〒181-0001
東京都 三鷹市井の頭3丁目31−4

【1F】 琥珀糖専門店 シャララ舎(右の扉)
​   https://www.instagram.com/shalalasha/
   営業日は土・日・月 13 時〜19 時
   予約のお電話は営業日の 14 時以降に

【2F】 喫茶 余白(左の扉)
   https://www.instagram.com/kissa.yohaku/
   営業日は 12時〜22時(木・水定休)
   
予約方法:https://www.instagram.com/p/C6Qn9KqvOhG/
  
尾高さまより店頭写真差し替え.jpg
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